余白のススメーフィンランドで感じた豊かさの源泉
目の前のタスクを懸命にこなせば成果になる。
勉強を頑張って、良い大学に入って、良い企業には入って真面目に頑張れば幸せになれる。
そういう時代は終わりつつあって、私の娘が20歳になる頃にはこの流れはもっと進むだろう。
常識は変化する。
決められたレールの上で必死に頑張れば成功する時代から、
自分で決めた道をイキイキと進んで行くのが当たり前になる時代がやってくる。
いや、もうすでに私たちはその時代に足を踏み入れているのだと思う。
自分でどんな道を行くか1人1人が再定義する時代、必要なのは「余白」だと思う。
慌ただしい毎日のなかで、ふと気がつけば、時間だけが過ぎていく。
SNSなどで簡単にすごい人の考えや生き方に触れることができる一方、
本来の自分の意志とは関係なく、他人が作り出した価値観に翻弄されやすい。
意図的に生み出さなければ、「余白」が失われやすい時代でもある。
2年間住んだ世界一幸福な国フィンランドでは「余白」を大切にしていた。
すごいスピードで流れる慌ただしい生活の中で、誰からも邪魔されない「余白」を生み出して、自分を生きている人が多いと思った。
1日2回のコーヒータイム:忙しくても欠かさない
フィンランドは人口わずか500万人の小国ながら、世界一のコーヒー消費量をほこる国。
フィンランド人の生活は決して、ゆっくりではない。
1日8時間の勤務時間を延長させない、できないため、如何に効率的に、家事・仕事をしていくか工夫をしている。
それでも、毎日欠かさずとっている余白は、1日2回のコーヒータイム。
AM10時とPM3時に15分程度のコーヒー休憩を取る。
オフィスにはカフェが併設されているケースが多い。少なくともコーヒーメーカーはある。
この時間に友人と談笑する人もいれば、一人でタバコを吸いながら考え事をする人もいる。
忙しいからといって決して、このルーティーンはやめない。
焦ってもムダという言葉があるように、余裕がない時こそ、精神を落ち着かせて、目の前の事に集中したい、焦るのはダサいという価値観があるように思った。
シンプルで簡単な食事、子どもの朝食は保育園で
フィンランドの朝は想像以上に忙しい。余白を作るためには効率的であることも重要だ。
日本の家庭のように、味噌汁・ご飯・鮭・サラダといったしっかりとした朝食は取らない。
朝起きてから家を出るまで、子どもがいれば、1時間半はかかりそうなところ、
フィンランドの友人は起床から30分後には家を出ていた。
それを可能にしているのが、朝食の手抜き。
子どもの朝食は、保育園で食べさせてくれるから親は用意しない。
親の朝食も会社に併設してあるカフェでとるか、昨夜の残り物をカバンに詰めて仕事をしながら食べる。家で食べたとしても、カレリアンパイ(写真)とスムージーのような簡単な食事を取る印象だ。
朝食をゆっくり食べない分、睡眠時間を長くとったり、夜の家族との時間に充てられる。
冬は日照時間が短く、夏よりも多くの睡眠時間を必要とすることも関係しているのだろう。
フィンランド発祥のサウナ:耐え忍び初めて「整う」
日本の家庭にバスタブがついているように、フィンランドの家庭にはサウナがついている。
SISU(シス)という言葉をご存知だろうか。
困難にあっても決してくじけない強い心というフィンランド語。
世界一幸福な国というと、悠々自適で余裕のある精神性を持っていると思うかもしれない。でも、フィンランド人は、辛いことがあっても寡黙に耐え忍びながら努力を続ける事を美徳としている。極寒の冬を乗り越えるため、このような精神性が育まれたのかもしれない。
「整う」というサウナ用語がある。
普段の生活の中で溜まってきたストレス、雑念、大量のノイズを、身体の中から削ぎ落として、本来の自分に戻り、究極のリラックス状態になる。熱いサウナに入って、水風呂にしばらく入ると、この整うという状態になることができる。
SISUの精神で熱いサウナに入って、冷たい水風呂に入ることを耐えて、体も心も「整う」。
今まで答えが出なかった難題に、シャワーを浴びているときにヒラメク。
子どもと公園で遊んでいるときに、ふと、大切な用事を思い出す。
仕事や人生の問題に意識的には向き合っていない、リラックスした状態のときに、創造的になる経験はあると思う。サウナによって「整う」ことで、心と身体に余白が生まれ、見失いがちな自分なりの感覚を取り戻すことができるかもしれない。
デザインされた空間的な余白
天井が高い空間に行くと、創造的になれる。
山に登ると、開放的な気持ちになる。
洗練された建築に行くと、心が安らぐ。
フィンランドはデザインの国。
驚いたのが、地下鉄の駅、図書館、教会、古いアパート、ありとあらゆる建築に余白がデザインされている。内省的になれる空間とも言えるだろうか。
都心の満員電車の中、いくら時間的な余白があっても、自分に意識を向けるマインドフルな状態にはなりにくい。フィンランドには、マインドフルになれる空間がありとあらゆるところにあった。
大学図書館
アルヴァ・アアルトのオフィス(建築家・Artekの設立者でもある)
イライラしたら森に行け:幼少期からの教育
フィンランド式のストレスマネジメント。
小学校の授業で、怒りという感情を覚えたら、その場で5秒間深呼吸をすること。
悩みがあったら、森に行って考えること。を小学校から習うそうだ。
フィンランドには至るところに森がある。
私が住んでいた家も森の中にあった。それでも、都心ヘルシンキまで電車で10分。
少し足を伸ばせば、海と森の両方に囲まれることができる。
ここでは、悩みがあったら、小っぽけな自分と壮大な自然という対比を感じながら、
謙虚に自分と向き合うことができるように思った。
余白は自分で作るもの
フィンランドには余白を生み出しやすい「環境」的な要因がある。
人口が少なく、空間が広い。
1日8時間の勤務が当たり前で、残業はしないのが当たり前。
小さい頃から、宿題はほとんどない。などなど
でも、日本にいても余白は「意図的に」生み出すことができるのではないだろうか。
仕事の帰り道、ふらっと公園に行ってみる。
早く仕事が進んだ日は、15分コーヒーの時間を取る。
カレンダーに敢えて何も予定を入れない日を作る。
こういった余白を意識的に入れることで、1人1人が多様な方向性に進んでいくのが当たり前になっていく時代において、自分の感覚や感情に素直になって、自分らしくイキイキとした選択をしていく第一歩になるのではないだろうか。そうやって「余白」と「効率」のちょうど良いバランスをとることが、日々の仕事や生活の生産性にも繋がっていくのだと思う。
余談:夜ご飯は2回食べる
フィンランドの人は夜食を取ります。
だいたい22時の就寝前に、甘い麦のおかゆを食べます。
1日のうちに取る食事・軽食は、
1. 朝食
2. コーヒータイム
3. 昼食
4. コーヒータイム
5. 夕食
6. 夜食
さすがに取りすぎだと思います。私の感覚からすると。
お相撲さんは1日2食にして、身体にエネルギーを蓄えるそうですが、
フィンランド人はちょっとずつ食べることで、眠くならないし、意外と健康的なのかもしれないとも思いました。
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